本記事には実際のお客様とのやり取りをもとにした描写がありますが、個人が特定されないよう脚色を加えています。
五月の連休が始まると、決まって聞くようになる一言があります。
「今日は実家に行ってきた帰りなんだ」 四月の終わりごろから、五月五日を過ぎるあたりまで、この前置きで添い寝リフレに入ってこられる方がいらっしゃいます。
四十代から六十代、男性のお客様に多い傾向があります。
私のお仕事は東京23区を中心とした派遣型ですので、ご実家への日帰り訪問の帰り、新幹線を降りてそのままホテルに、というケースもあります。
ご実家で何があったかを、こちらから尋ねることはありません。
ただ横になってお話を聞いていると、共通している輪郭がいくつかあります。
ひとつは、お子さんが小さかった頃の話を、ご自分から始める方が多いということ。
鯉のぼりを買ったときの値段の話、兜のかざりをしまう場所をめぐる夫婦のやり取り、保育園の制作で持ち帰ってきた紙の兜の話。
ふたつめは、その話の途中で、必ず数秒の沈黙があるということです。
私は、その沈黙のときに口を挟まないようにしています。
当店が大切にしている甘やかしの考え方の中に、余白という要素があります。
言葉で埋めない、答えを急がない、ただ隣にいる時間を保つ。
こどもの日の夜の沈黙は、その余白がいちばん必要になる瞬間のひとつだと感じています。
お子さんと会えた方も、会えなかった方も、もう会えない方も、それぞれの五月五日を抱えて連休の終わりにいらっしゃる。
添い寝のお仕事は、結論を出す場所ではありません。
眠りに落ちる前の数十分、誰にも見せられない顔を置いていける場所であればいいと思っています。
連休の最終日、新幹線の最終で東京に戻ってこられる方がいらっしゃいましたら、深夜帯のご予約も承ります。
お話したくなければ、何も話さずに横になってくださって構いません。

